すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 叔父の罪を暴いてから二週間ほどが経つ。彼は今、横領や脅迫などの罪に問われて裁判を待つ身だ。私と父にかけられた疑惑もこれで晴らされると、大きく安堵している。

『ようやく、悠里の本当の笑顔を見られた』

 先日、拓真さんは私にそんなことを言った。疑われる身であった間は、自分でも知らず知らずのうちに暗さがにじみ出ていたのかもしれない。

 お金を受け取っていた宮野さんにも、調べは及んでいる。漏れ聞こえてきた話によると、もともと彼女は自身のギャンブル依存が原因で離婚をしていた。地元に戻ってからは、お子さんを両親に預けたまま育児にはほとんど関わっていなかったという。かろうじて仕事はしていたものの、時間が空けば稼いだお金を賭け事につぎ込んでいたようだ。

 会社はしばらくごたごたするだろう。次期社長の目途など叔父は立てていなかった上に、リーダーシップを取れるような親族もいない。

 今は副社長を務めていた人が社長の座に就いたが、父が亡くなってから叔父が独断で進めていた案件も多いようで……というより、引っ掻き回していたと言う方が正しいのかもしれない。とにかく、現状把握だけでもかなり大変そうだという。

 新たに社長に就任した社員は、私も知っている信頼できる人だ。だから会社を任せることに不安はない。ただ、身内のしたことで大きな負担をかけてしまったことは申し訳なく思う。

 その辺りは、お義父様がいつでも相談に乗ると申し出てくれている。先日は早速、必要な人材を派遣してくれたらしい。

 川島金属機器は、なんとかこの難局を乗り越えられそうだ。そう拓真さんが教えてくれて、ひとまずほっとしている。

「それじゃあ行ってくるから。二日後の夜は、待ち合わせて食事に行こう」

「うん。気をつけていってらっしゃい」

「光太、いってくるな」

 息子の頭をなでて頬に口づけた拓真さんは、名残り惜しそうな顔をしながら玄関の扉を開けた。
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