すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「ん……」

 額になにかが触れたのを感じて身をよじる。そのせいでバランスを崩した体を、誰かが支えてくれた。

「……あれ?」

 薄らと目を開けたところ、あまりの眩しさに眉間にしわが寄る。
 人の気配を感じて、パッと体を起こした。

「……拓真、さん……?」

「こんなところで寝ていると、調子が悪くなるよ」

 素早く周囲を見回す。私がいたのは、リビングのソファーだ。
 すでに日付が変わっているのを確認して、彼に視線を戻した。

「拓真さん……」

 機体トラブルを起こしたニュースをようやく思い出す。途端に涙が頬を伝い、たまらず彼に抱きついた。

「よかった。無事で、本当によかった」

「ごめんな。約束もすっぽかしてしまったし、ずいぶん心配をかけた」

 そんなことはどうでもいいと、必死で首を横に振る。

「連絡も入れられなくて」

 無事だとわかったのだから大丈夫だと、彼を抱きしめる腕に力を込めた。

「なんとか今日中に帰ってこられた。早く、悠里の顔が見たくて」

 彼に促されて、胸もとからそろりと顔を上げる。

「ただいま、悠里」

「おかえり、なさい」

 涙で声が震えてしまう。
 私を見下ろす拓真さんは困ったように眉を下げて、それから額に口づけた。

「飛行中にトラブルに見舞われて、真っ先に浮かんだのが悠里と光太の顔だった。ふたりのもとへ帰るために、なんとしても無事に着陸させてみせると」

 言葉を返せなくて、うんうんとうなずく。

「愛してる、悠里」

 口づけられて、そっと瞼を閉じる。
 まるで私の存在を確かめるように、彼は軽い口づけを何度も繰り返した。

「んん……」

 熱い舌が、口内に差し込まれる。私を抱きしめる腕は優しいのに、彼の舌はどこか早急に暴いていく。
 頭の中がぼんやりとして、ただひたすら拓真さんに近づきたいと自分からも舌を絡ませた。
< 179 / 183 >

この作品をシェア

pagetop