すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「ご迷惑では?」

「迷惑だったら言ってないから」

 彼は父に恩を感じているようだし、そのお返しのような感覚で私を気遣ってくれているのかもしれない。

「なにからなにまでお世話になってばかりで、すみません」

「かまわない。だから、そんなふうに恐縮しないで」

 自宅まで送ってもらう間も、父や彼の仕事についていろいろと話を聞かせてもらった。

 いずれお父様の後を継ぐときにはパイロットを引退すると話す彼を、隣からそっとうかがう。

「その、未練とかはないんですか?」

 話しているうちに緊張も緩んきた。彼が穏やかで話しやすいからつい踏み込んだことを聞いてしまったけれど、嫌な顔をされなくてほっとする。

「そうだなあ……前提として、会社を継ぐには現場を知りたいという父の方針があったのと、俺自身もその考え方に賛同していたんだ」

 お父様のその方針は素晴らしくて、私も賛成だ。

「父からは、航空業界で自分の興味のある分野で一から鍛えてもらってこいと言われていた。もともと機体が好きだったから、整備やパイロットの仕事に就きたいと考えていたんだ。そこからいろいろと調べて、最終的に最も興味のあったパイロットの道を選んだ」

 彼はなんでもないように言うけれど、簡単になれるものではないはず。きっとたくさんの努力をしてきたのだろう。
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