すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 会話に一段落ついたところで、柴崎さんがそれまでよりほんの少し畏まった様子になる。

「雄大さん。今日もこの後、悠里さんと出かけてきます」

 許可を求めない彼の姿勢に、ドキッとする。以前は〝お預かりします〟なんてちょっと硬い言い回しをしていたが、今日は違う。
 勘違いしてはいけないけれど、柴崎さんと少しだけ打ち解けられたと思ってもいいだろうか。

「ああ、行ってこい」

 父に笑顔で見送られながら、そろって病室を後にした。

「柴崎さん、今日はどこへ?」

 駐車場に向かいながら、彼に尋ねる。

「君に、俺のネクタイを選んでほしくて」

「私に?」

「そう」

 車に乗り込み、ゆっくりと動き出す。

「少し先になるが、大きな会議があるんだ。そこで企画を提案する予定でいる。悠里さんには、ゲン担ぎの勝負ネクタイを選んでもらおうかと思って」

 彼の口から〝ゲン担ぎ〟なんてワードが出てくるなんて、予想外で呆けてしまう。優秀で立場のあるすごい人だと思っていた柴崎さんが、少しだけ近く感じられた。
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