すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「川島さん、二日後に退院が決まりましたよ」

「本当ですか? よかったあ」

 父のお見舞いへ来ていたところ、部屋を訪れた看護師が教えてくれた。

「後で先生からも説明があると思いますので」

「はい、ありがとうございます」

 看護師が退室し、父の方へ向く。

「お父さん、よかったね」

「ああ。やっと帰れそうだ」

 手術前から入院をして、かれこれ一カ月ちかく経った。本来は二週間ほどで退院になるはずだったが、回復が遅かったために少し長くかかってしまった。

「あっ、でも、退院できたからって無茶したらだめだからね。会社の方は哲二叔父さんが守ってくれているし、お父さんはもうしばらくゆっくりするのよ」

 困ったような顔をする父に、すぐにでもフルで働くつもりなのだろうと察する。

 後に病衣室へ来た医師からも、正式に二日後の退院を告げられた。あらためてそれを喜びつつ、荷物をまとめておく。

「それじゃあ、お父さん。今日はそろそろ帰るね」

「ああ、ありがとう。そうだ。退院のことを、拓真君にも伝えておいてくれるか」

「わかった」

 もちろん、帰宅したら柴崎さんに伝えるつもりでいた。彼は今でも連絡をくれ、関係が続いている。

 軽い足取りで帰宅して、スマホを手にする。家事は後回しにして、柴崎さんに父の退院を知らせるメッセージを送信した。

 洗濯機を回し、終わるまでの間に簡単に食事を済ませておく。父の病気が判明した頃はすっかり食欲をなくしていたが、柴崎さんの支えもあってきちんと食べられるようになった。
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