すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
父が退院したら、これまでよりももっと栄養に気遣ったメニューを考えよう。そう心に誓っていたところで、スマホの着信音が鳴った。
病院からの連絡かもしれず、慌てて手にする。画面に表示されていたのは、柴崎さんの名前だった。
「も、もしもし?」
メッセージのやりとりは頻繁にしてきたけれど、電話は初めてだ。
『急にごめん。今、大丈夫だった?』
「はい」
彼はまだ職場にいるのか、ざわざわした様子が微かに伝わる。
『雄大さんの退院が決まったって? おめでとう』
「ありがとうございます」
『落ち着いた頃に、自宅にお祝いに行かせてもらっても?』
「もちろんです。父にも伝えておきますね」
それから簡単な会話を終えて通話を切る。それからふうと息を吐き出した。
「そういえば……」
一緒に出掛けたりメッセージのやりとりをしたり、柴崎さんとのつながりをすっかり当たり前になっていた。
でも父が退院したら、お祝いを最後に彼とのつながりは途切れてしまうのだろう。
もちろん、父の体調が回復することがなによりも大事だ。父には、いつまでも元気でいてほしい。
けれど……と、それとは別に気持ちが沈む。
私と柴崎さんは、父あっての関係だ。父が日常の生活に戻れば、彼との接点はなくなる。そう思うと、気持ちは伝えないと決めているはずなのに胸が苦しくなった。
「ううん。これでいいんだって」
もともと、柴崎さんは雲の上の人だ。本当なら、こうして連絡を取り合うような相手じゃない。父がいなければ、知り合う機会すらなかった。
彼は私が父の娘だから、なにかと気にかけてくれた。そんな頼もしくて優しい彼を、私がうっかり好きになってしまっただけ。
「忘れないと」
ズキズキと続く胸の痛みに気づかないふりをして、食器を片づけようと席を立った。
病院からの連絡かもしれず、慌てて手にする。画面に表示されていたのは、柴崎さんの名前だった。
「も、もしもし?」
メッセージのやりとりは頻繁にしてきたけれど、電話は初めてだ。
『急にごめん。今、大丈夫だった?』
「はい」
彼はまだ職場にいるのか、ざわざわした様子が微かに伝わる。
『雄大さんの退院が決まったって? おめでとう』
「ありがとうございます」
『落ち着いた頃に、自宅にお祝いに行かせてもらっても?』
「もちろんです。父にも伝えておきますね」
それから簡単な会話を終えて通話を切る。それからふうと息を吐き出した。
「そういえば……」
一緒に出掛けたりメッセージのやりとりをしたり、柴崎さんとのつながりをすっかり当たり前になっていた。
でも父が退院したら、お祝いを最後に彼とのつながりは途切れてしまうのだろう。
もちろん、父の体調が回復することがなによりも大事だ。父には、いつまでも元気でいてほしい。
けれど……と、それとは別に気持ちが沈む。
私と柴崎さんは、父あっての関係だ。父が日常の生活に戻れば、彼との接点はなくなる。そう思うと、気持ちは伝えないと決めているはずなのに胸が苦しくなった。
「ううん。これでいいんだって」
もともと、柴崎さんは雲の上の人だ。本当なら、こうして連絡を取り合うような相手じゃない。父がいなければ、知り合う機会すらなかった。
彼は私が父の娘だから、なにかと気にかけてくれた。そんな頼もしくて優しい彼を、私がうっかり好きになってしまっただけ。
「忘れないと」
ズキズキと続く胸の痛みに気づかないふりをして、食器を片づけようと席を立った。