すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「そうか、兄さんの退院が決まったか」

 翌日、会社へ着いてすぐに、哲二叔父さんに父の現状を伝えた。

「そうなんです」

 人当たりのよい笑みで応じた叔父は、それからわざとらしく眉間にしわを寄せて見せた。

「よかったな。だが、無理をさせてはいかんぞ。もうしばらくは、自宅でゆっくりしてもらいたい」

 父が不在なため、そのしわ寄せが叔父にいっている。残業はもちろんのこと。取引先との会食や休日にはゴルフの付き合いもあり、確実に拘束される時間は長くなっているはず。

 それでもこうして気遣ってくれる叔父には、感謝しかない。

「父に、しっかり言い聞かせておきますね」

 手術後に少しずつ元気を取り戻してきた父は、まだ退院が決まるずっと前から仕事のことを口にしていた。放っておけばすぐに、以前のようなワーカホリック気味の生活に戻ってしまいそうだ。

 周囲にも父の退院を報告し、これまで融通を聞かせてくれていたことの感謝を伝える。たくさんフォローしてもらった分、これからはしっかりと返していくつもりだ。

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