すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「まずいな」

 少し前までは青空が広がっていたはずなのに、いつの間にか重苦しい灰色の雲が空を覆っている。周囲に人気は少なくなっており、冷たい風がひゅっと吹き抜けた。

「悠里さん、動ける?」

「え、ええ」

 それほど遠くない位置から、雷の音が響いてくる。
 急な雷雨の予感に慌てて立ち上がった。

 とはいえ、ここは大きな公園のど真ん中だ。ざっと見回したところ、すぐに駆け込める屋根のある場所が見つからない。

「行こう」

 前触れもなく、柴崎さんが私の手を握る。ドキリとしたのは一瞬で、再び感じた雨粒に恥ずかしさはかき消された。

 雨は、堰を切ったように本格的に振り始める。同時にさっきよりも近い距離から雷鳴がとどろき、驚きに足を止めそうになった。

「大丈夫か?」

 彼が手を引っぱってくれる。

「はい」

 さっきまでの晴天が嘘のようだ。目も開けづらいほどの雨を受けながら、促されるまま必死についていった。

 ようやく屋根のある場所にたどり着いたはいいが、横降りの雨は中まで振り込んできてしまう。ここに来るまでに、ふたりともぐっしょり濡れてしまった。

「すまない。天気が崩れるとは把握していなかった」

 濡れた髪を払いながら彼が言う。

「仕方ないですって。私も知りませんでしたし」

 空を見ていた柴崎さんが、「大丈夫だった?」と尋ねながら背後に立っていた私を振り返った。

「お互いに、ずぶ濡れですね」

 これ以上悪い状態になり様がないからと、いろいろと吹っ切れてしまった。
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