すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 指とは比べ物にならない感覚に体が強張る。
 思わずひゅっと息をのむと、彼が口づけてくれる。その間にも、奥へ奥へと体の内側が暴かれていった。

 無理やりこじ開けていくような苦痛に、息を詰める。

「うっ……」

 初めての痛みに、こらえきれなかったうめき声が漏れてしまう。

「すまない」

 薄らと目を開ける。謝った彼の方こそ辛そうな顔をしており、胸が切なくなる。無意識のうちに腕を伸ばし、彼の頬に触れていた。

 ふっと表情を緩めた柴崎さんが、私の手に自身の手を重ねる。それから目を閉じて頬をすり寄せてきた。
 甘えるような仕草に、彼への愛しさが膨れ上がる。

 けれど……と、再び瞼を閉じた。

 曖昧な関係で「好き」だなんて言えない。打ち明ければ彼を困らせてしまうと、かすかに残る理性でなんとか踏みとどまる。
 
 この行為は、突発的な事故のようなもの。だって最初は、お互いにそんなつもりなんてなかったのだから。
 偶然重なったシチュエーションに煽られた結果で、どちらが悪いわけでもない。

 雰囲気に流されただけだというのに、そう思うのは少し苦しい。だから私は、好きな人に触れられる幸福だけを感じていたい。

「はあ」

 彼が息を吐き出す。

 そっと瞼を開けると、目が合った途端に微笑んだ柴崎さんは、そのまま体を倒して私を抱きしめた。
 ふたりの間にわずかな隙間もなく、ひとつになれたのだと実感する。シーツを手放して、思うままに彼の背に腕を回した。
< 58 / 183 >

この作品をシェア

pagetop