すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「悠里」

 名前を呼ばれただけで下腹部が疼き、彼がピクリと反応する。

 少しずつ落ち着きを取り戻してきたところで、彼がわずかに体を起こして口づけた。それに覚えたての拙い動きで必死に舌を絡ませる。

 舌を絡ませ合ったまま、彼がゆっくりと動き始める。

「んん……」

 しばらくはよくわからないでいたけれど、少しずつ快感を拾いはじめる。弱い場所を中心的に刺激されると、小刻みに体が震えた。

 口づけから解放されると、甘い嬌声が止まらない。なにも考えられなくなっていき、ひたすら彼に翻弄され続けた。

「あっ、あぁ……」

 絶頂の予感に、全身が強張る。
 それからひと際激しく突き上げられて、悲鳴のような声を上げる。下腹部から全身へ快感の波が広がっていった。

 彼は痙攣する私の体をもうしばらく攻め立てて、それからかすかな呻き声を上げて動きを止めた。

 隣に体を横たえた柴崎さんが、私を抱き寄せてくれる。少し汗ばんだ肌が、行為の激しさを物語っていた。
 地肌に伝わる温もりも彼の鼓動も彼の気遣いも、すべてが心を満たしてくれる。

 私からは、一度も彼の名前を呼ぶことはできなかった。好きだとも伝えられていない。

 でも、こんな素敵な思い出をもらえたのだから十分だ。そんなことを考えているうちに、歩き回った疲れもあって眠りについていた。



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