すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「ここのところ、拓真君も忙しくしているみたいだな」
「……そう、みたいだね」
夕飯を終えてリビングでくつろいでいた父が、唐突に切りだした。その名前にドキリとしたが、悟られないように平静を装う。
父は退院して、もうすぐ二カ月近くが経つ。すでに仕事復帰を果たしているが、よほどのことがない限り残業はさせないように周りがフォローをしている。それに、対外的な付き合いは変わらず叔父が担っている。
父は手術で肺の一部を切除している。そのため息が上がりやすく、職場でもたびたび辛そうな様子を見せる。しばらくして落ち着くと、周囲には悟られないようにしつつ悔しそうな顔をする。
うちにしか作れないものがあることを誇りに思い、この先もなんとしても守り抜きたい。そう強い意志を持ってここまでやってきた父にとって、病気のせいで足止めされたような現実に対するやるせなさは相当大きいのだろう。
そんな父を見ていると、私も胸が苦しくなる。
「パイロットと会社の役員の二足わらじだって言っていたしね」
声は震えなかったが、視線が泳ぐ。
幸い父は自分の手もとに目を向けていたため、私の動揺には気づいていないようだ。
「どちらかに専念する時期も近いのかもしれんが、拓真君はなんでもそつなくこなす器用な男だからなあ。どちらも求められるレベルでやり通せてしまうんだろう。俺との約束もあるから、もう数年はパイロットを続けると言っていたしな」
「約束って?」
そういえば、以前もそんな話をしていた気がする。
私が聞き返すと、父は顔を上げた。
「それは男同士の秘密だな」
父が表情を緩める。気にはなるが、この調子だと教えるつもりはないのだろう。父が未来を楽しみにしているのならそれでいい。
「さて、そろそろ寝るかな。おやすみ、悠里」
「おやすみ」
リビングを後にする父を見送って、私も自室へ向かった。
「……そう、みたいだね」
夕飯を終えてリビングでくつろいでいた父が、唐突に切りだした。その名前にドキリとしたが、悟られないように平静を装う。
父は退院して、もうすぐ二カ月近くが経つ。すでに仕事復帰を果たしているが、よほどのことがない限り残業はさせないように周りがフォローをしている。それに、対外的な付き合いは変わらず叔父が担っている。
父は手術で肺の一部を切除している。そのため息が上がりやすく、職場でもたびたび辛そうな様子を見せる。しばらくして落ち着くと、周囲には悟られないようにしつつ悔しそうな顔をする。
うちにしか作れないものがあることを誇りに思い、この先もなんとしても守り抜きたい。そう強い意志を持ってここまでやってきた父にとって、病気のせいで足止めされたような現実に対するやるせなさは相当大きいのだろう。
そんな父を見ていると、私も胸が苦しくなる。
「パイロットと会社の役員の二足わらじだって言っていたしね」
声は震えなかったが、視線が泳ぐ。
幸い父は自分の手もとに目を向けていたため、私の動揺には気づいていないようだ。
「どちらかに専念する時期も近いのかもしれんが、拓真君はなんでもそつなくこなす器用な男だからなあ。どちらも求められるレベルでやり通せてしまうんだろう。俺との約束もあるから、もう数年はパイロットを続けると言っていたしな」
「約束って?」
そういえば、以前もそんな話をしていた気がする。
私が聞き返すと、父は顔を上げた。
「それは男同士の秘密だな」
父が表情を緩める。気にはなるが、この調子だと教えるつもりはないのだろう。父が未来を楽しみにしているのならそれでいい。
「さて、そろそろ寝るかな。おやすみ、悠里」
「おやすみ」
リビングを後にする父を見送って、私も自室へ向かった。