すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 ベッドに上がり込み、ヘッドボードに体を預けてスマホを手に取る。柴崎さんから受け取ったメッセージを表示させて、「はあ」とため息をついた。

 柴崎さんと肌を重ねたあの日。私が目を覚ますと、服はすでにクリーニングが終わって届けられていた。

 そこから出かけようという気にはさすがにならない。今日のところは帰ろうかと部屋を後にしようとしたタイミングで、職場から連絡が入った彼は急遽会社に向かわなくてはならなくなった。

『こんなときに……申し訳ない。自宅まではこのタクシーを使って』

 何度も謝罪する柴崎さんに、こちらも『大丈夫だから』と繰り返す。電車で帰れるというのに、タクシーの手配までさせてしまったことの方がむしろ申し訳なかった。

 あの日、彼とは十分な話もできないまま別れてしまった。
 いや。肌を重ねたのは事故のようなものだったから、なにも言わずになかったことにした方が正解なのかもしれない。

 柴崎さんとは、それから一カ月以上顔を合わせていない。あのとき呼び出された件で、とにかく忙しくしているようだ。

 このまま私との縁は切れていくのだろう。そんなふうに思っていたが、意外にも柴崎さんからのメッセージは途切れなかった。

【きちんと顔を合わせて話をしたいが、急な仕事で身動きが取れない。必ず連絡をするから、待っていてほしい】

 多忙な彼を煩わせたくなくて、こちらからはなにも連絡をしていない。

 顔を合わせてなにを話すつもりだろう。
 もしかして突発的とはいえあんなことになり、責任を取るとか言われるのだろうか。
 あるいは、まったく違うことを考えているのか。
< 61 / 183 >

この作品をシェア

pagetop