すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「これはフェードアウトしていく、口実なのかな」

 恩人で父親のように慕う人の娘と深い関係になるべきではなかったと、冷静になったところで後悔しているのかもしれない。不誠実な人ではないとわかっているけれど、どうしたって悪い方へ考えてしまう。

 たとえ柴崎さんが私を避けていたのだとしても、落ち込む資格なんてない。
 彼がどういうつもりでいるのかはっきりしないが、面と向かって謝罪されるのだとしたらさすがに辛い。だから、このままつながりが消滅するのも悪くない。

「もともと、最後の思い出だって決めていたじゃない」

 柴崎さんとああなったことに、後悔なんて微塵もない。
 ただ彼があまりにも優しくて情熱的だったから、私が勝手に期待してその先を望んでしまった。

 けれど、私たちは付き合っているわけでもない。お互いに、種類の違う好意を抱いているだけだ。だからもうこれ以上、踏み込むつもりはない。

 彼から届くメッセージは受け取るし、当たり障りのない返しもする。でも、それ以外に自分からはなにも動かない。
 そう決めた少し後に、柴崎さんから会いたいとメッセージが届いた。

 彼が指定したのは、平日の夜だった。週の真ん中のため、翌日も仕事がある。つまり、長く過ごすつもりはないと仄めかされているのだろう。期待はしないと決めたはずなのに、胸がチクリと痛んだ。


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