すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 つれて来てくれたのは、一軒家のフレンチレストランだ。アンティーク調の外観がかわいらしく、入りやすい雰囲気なのがありがたい。

 スタッフに、個室に案内される。料理は彼と同じものをお願いした。

「あらため、あの日はごめん」

 行為に対する謝罪かと、ズキリと胸が痛む。彼は後悔しているのだろうか。

「急な仕事で、君をひとりで返すことになってしまって」

 そっちの話かと、うつむき気味だった視線を上げる。

「あれ以降も、なかなか会えなくて」

「い、いいえ」

 期待してはいけないと思っていた中、彼からのメッセージは途切れなかった。だからこそ柴崎さんを忘れられなくて苦しかったけれど、同時に気にかけてくれることがうれしかった。

「それに今日も。仕事上がりの疲れているときに呼び出して、ごめん。いろいろとあって、ここしか時間を取れなくて」

「そんな忙しい中で誘ってくれて、ありがとうございます」

 それからしばらく、運ばれて来た料理を楽しんでいた。

「こんな豪華な料理を食べたって知ったら、お父さんにうらやましがられちゃいそう」

「食べる意欲があるってことはいいことだ。近いうちに、雄大さんを誘えるといいが」

 多忙でなかなか難しいのだろうと、言いよどむ様子に察した。
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