すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「わかりました」

 彼が日本へ帰ってきたときに、なにを言われるのかはわからない。それなのに、否応なしに期待が膨らむのを抑えられそうになかった。

 彼が私とのつながりを切らないでいてくれるのなら、言われた通り待ちたい。ものわかりよくそう納得するのは、惚れた弱みというのか。

 せめてその間に、柴崎さんに選んでもらえるような自分になっていたい。いずれ会社を率いていく彼の隣に立つのにふさわしい女性になれるよう、私も努力をする。心の中で、そう密かに決意した。

「ありがとう」

「アメリカへはいつ頃……?」

「実は二日後なんだ」

 年始を待たないずいぶん急な話に驚いて、目を瞬く。先日も急な呼び出しがあったくらいだから、トラブルでもあったのかもしれない。多忙なのも仕方がないのだろう。

「これを君に」

 そう言って差し出された箱には、シンプルなネックレスが入っていた。トップのハートのモチーフには、淡いピンクの宝石が輝いている。

 私と彼との曖昧な関係で、どうしてプレゼントをくれるのかと視線を向ける。

「ほら。クリスマスシーズンだというのに、なにもできなかったから」

 長い付き合いがあるわけでもないし、私たちは交際してもいない。決して、特別な日に贈り物をもらう間柄ではないはず。

「がんばっている、悠里に」

 戸惑う私にかまわず、ネックレスを手にした柴崎さんが私の背後に回る。

「髪を押さえていて」

 言われるまま従っていると、彼が私にネックレスをつけてくれた。

「よく似合ってる」

 正面に戻り、柴崎さんが笑みを浮かべる。

「でも、私はなにも用意していなくて」

「こうして、俺に会いに来てくれただけで十分だよ」

 そんな言い方はずるいと思う。それ以上の遠慮は、言葉にしないでのみ込んだ。

「あ、ありがとう、ございます」

「どういたしまして。遅くなるといけないから、そろそろ出ようか」

 食事を終えて、レストランを後にする。
 帰りは彼が自宅まで送り届けてくれた。
< 67 / 183 >

この作品をシェア

pagetop