すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
ふたつの別れ
小さな箱に納まった父の遺骨を手に、呆然とする。
葬儀に参列してくれた人たちは、私に配慮して距離を置いて見守ってくれている。情けないが、今話しかけられてもまともな返しなどできなかっただろう。
手術は成功して、もう大丈夫だとまではいかなくとも、ひとまず危機は脱しただろうと思っていた。
退院後はこれまで以上に健康管理に気をつけて、父が無理をしないように皆も見守っていた。
そうやって、少しずつ日常を取り戻していたはずだった。
「お父さん……」
震えた小声は、誰の耳にも届くことはない。
柴崎さんと最後に会って一カ月ほど経った先日。父は急に体調を崩したと思ったらすぐさま入院が決まり、医師の奮闘も虚しくこの世を去った。
直接の死因は、間質性肺炎だという。
肺の大部分を摘出しているとか、性別が男性だとか、リスク因子は様々考えられるらしい。どれも可能性があるというだけで、結局のところ原因はっきりとはわからないのだと思う。
間質性肺炎については、術後数日した頃に起こしやすいとは事前に聞いていた。
けれどその危険な時期はとっくに過ぎており、無意識のうちにもう起きないものだと思い込んでいた。その油断も原因のひとつだったのかもしれないと、自分の振る舞いに後悔ばかりが押し寄せてくる。
自分がもっと気をつけていたら、父は助かっただろうか。たびたび苦しそうにしていたのは肺を切除したからではなくて、その頃からよくない傾向にあったのかもしれない。
葬儀に参列してくれた人たちは、私に配慮して距離を置いて見守ってくれている。情けないが、今話しかけられてもまともな返しなどできなかっただろう。
手術は成功して、もう大丈夫だとまではいかなくとも、ひとまず危機は脱しただろうと思っていた。
退院後はこれまで以上に健康管理に気をつけて、父が無理をしないように皆も見守っていた。
そうやって、少しずつ日常を取り戻していたはずだった。
「お父さん……」
震えた小声は、誰の耳にも届くことはない。
柴崎さんと最後に会って一カ月ほど経った先日。父は急に体調を崩したと思ったらすぐさま入院が決まり、医師の奮闘も虚しくこの世を去った。
直接の死因は、間質性肺炎だという。
肺の大部分を摘出しているとか、性別が男性だとか、リスク因子は様々考えられるらしい。どれも可能性があるというだけで、結局のところ原因はっきりとはわからないのだと思う。
間質性肺炎については、術後数日した頃に起こしやすいとは事前に聞いていた。
けれどその危険な時期はとっくに過ぎており、無意識のうちにもう起きないものだと思い込んでいた。その油断も原因のひとつだったのかもしれないと、自分の振る舞いに後悔ばかりが押し寄せてくる。
自分がもっと気をつけていたら、父は助かっただろうか。たびたび苦しそうにしていたのは肺を切除したからではなくて、その頃からよくない傾向にあったのかもしれない。