すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「悠里ちゃん、大丈夫かい?」

「叔父さん……」

 叔父をはじめ、会社の従業員には迷惑をかけ続けている。

 父が再び入院した際に、叔父は『会社のことは大丈夫だから、悠里ちゃんは兄さんについていてやってほしい』と言ってくれた。父が職場から救急搬送されるのを叔父も見ており、もしものことがあるかもしれないと察したのだろう。

 心苦しかったし、社会人にもかかわらず周りに甘えすぎだという自覚もあった。でも今回ばかりは私も父にずっとついていたいと望んだ。

「なにか困ったことがあったら手を貸すから、遠慮なく言うんだよ」

「……ありがとう」

 ショックで私がなにもできないでいる間に、叔父にはずいぶんと助けられた。
 葬儀はすべて叔父が取り仕切ってくれたし、必要な各所への連絡も任せっきりだ。会社の方も、彼が本格的に社長を引き継ぐことに決まっている。

 夜になって誰もいない家に帰り、リビングに座った途端に涙が溢れ出す。

 荷物の整理とか、葬儀への参列が叶わなかった人の来訪の受け入れ準備とか、やるべきことはたくさんある。でもすぐには動けそうになくて、ぼんやりとしていた。

 幼い頃に亡くした母の記憶はほとんどない。

 両親がそろっている友人の家族を見て、うらやましいなと思うことはあった。けれど、寂しいとは感じない。それは、いつだって父が寄り添ってくれたから。

 私が大人になるにつれて親子の関係は少しずつ変化していき、今ではこちらがお世話をしてあげているような感覚だった。放っておくと仕事漬けになって食事も適当になる父を、娘の私ができる限りサポートする。それが私たち親子のかたちだった。

 遠くに住む親類とは、付き合いが薄い。母方の叔母はよくしてくれるが、彼女は国外に住んでいるため簡単には会えない。

 ひとりきりになってしまったのだと、言いようのない不安に襲われる。年明けからなんとなく体調不良が続いていたが、今日は一段と気分がすぐれない。朝からなにも口にしていなかったが、今になっても食欲はまったくなかった。

 なにもする気が起きず、疲れきった体をベッドに横たえるとすぐに眠りについていた。

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