すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 うつらうつらとしているうちに、朝を迎えていた。微熱が出ているのか全身がだるくて、動きだすのが辛い。

 しばらくしてようやく布団を出ると、昨日のうちに買っておいた野菜ジュースとヨーグルトで朝食を済ませた。

 部屋を片づけようと立ち上がったところで、スマホの着信音が鳴り響く。画面に映しだされた叔父の名前に、伸ばしかけた手が止まる。
 けれど、出ないわけにはいかないだろう。ため息をひとつついて、のろのろとスマホを手にした。

「もしもし」

『悪いが、すぐに事務所の方へ来てほしい』

 以前のものとも、昨日の責めるような口調とも違う、緊張を孕んだ様子で叔父が告げる。

「今から、すぐに?」

『ああ。大事な話がある』

 とても明るい話題とは思えず、嫌な予感にスマホを握る手に力がこもった。

「わかりました」

 通話を切るとすぐさま準備をして、会社へと向かった。

「待たせてすみません」

「ああ、そこに座ってくれ」

 すでに到着していた叔父の表情に笑みはない。彼は私を応接室に通し、向かい合わせでソファーに座った。

「兄さんが、大変な事をしてくれた」

「お父さんが?」

 思い当たる節はなにもない。はやる気持ちを抑えきれず立ち上がりかけたが、目がくらんでソファーに倒れるように座る。その様子を叔父には訝しげに見られていたが、前を向いた私を確認して話を始めた。
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