すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「どうやら兄さんは、ここ数年のうちに会社の金を横領していたようだ」

「横領? 父は、そんなことをするような人じゃないです」

 誰よりもこの会社を大切にし、経営が苦しかった時もなんとか乗り越えようと奔走する姿は、叔父も近くで見てきたはずだ。

「信じたいのはやまやまだが……。兄さんが亡くなって、会社に関する諸々を整理していた中で、どうにも金の動きがおかしいとわかった。この二年ほどの間に、一千万以上の使途不明金が出ている」

「まさか…」

「金庫のカギを開けられる人間に疑いがかかるのは当然だ。もちろん私にも」

 ハッとして、叔父へ視線を向ける。ほかにも経理の責任者もいるのに、この人は横領したのは父だとどうして断定できるのか。

「昨日、実家の片づけをしていた中で、怪しげな通帳が見つかったんだよ。そこに、不定期にまとまった金が振り込まれている」

「そんな」

「会社の方も調べていたが、架空取引や帳簿の改ざんが見つかっている。まだすべては確認しきれていないが、わかっているだけでも金額と振り込まれた時期に矛盾はない」

 叔父が通帳を開いて見せてくる。そこには確かに数十万円、多い時には百万円単位の振り込みが記載されていた。

 同時に、お金が引き出されている形跡もある。その金額も大きい。もし父がやったのだとしたらなにに使ったのかと考えてみたが、まったく思い浮かばなかった。
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