すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 どうしたらいいのかと数日悩んでいたところ、母方の叔母から電話がかかってきた。

『悠里ちゃん、聞いたわよ。お義兄さんが亡くなったって』

 葬儀の前後の記憶は曖昧で、すべて叔父に任せてしまっていた。せめて母側の親族くらい、自分で動くべきだったと今さら気づく。

「ごめんなさい、美奈子(みなこ)叔母さん。バタバタして連絡もできていなくて」

 家具デザイナーをしている叔母は、若い頃にイタリアに渡って成功を収めている。大手のジュエリー会社を経営するセルジオとパートナーとなり、充実した生活を送っている。
 ふたりの間に子どもはおらず、私を実の娘のようにかわいがってくれる。そんな相手への連絡を怠っていたなんて申し訳なかった。

『謝らなくてもいいのよ。悠里ちゃんも大変だったでしょ? 私の方こそ、なかなか会いに行けなくてごめんなさいね』

「ううん」

 見えないにもかかわらず、首を左右に振る。

 すっかりふさぎ込んでいたところで耳にした叔母の声に、無性に安堵する。じわじわと涙が込み上げてくるのを、止められなかった。

「叔母さん」

『悠里ちゃん?』

 涙声になったのは、叔母にも伝わったのだろう。スマホ越しに、戸惑っているのが伝わってくる。

「ご、ごめんね、叔母さん」

『大丈夫? すぐにそっちに行った方がいいかしら?』

「ち、違うの」

 忙しい叔母の手を、煩わせたくない。そう思うのに涙を止められなくて、小さく嗚咽を漏らした。
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