すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
『お義兄さんのこと以外に、なにか困っていたりする?』

 私の様子が変だと察したのか、叔母がそれまでよりも硬い口調で尋ねてくる。

『不安とか心配なこととか、私がなんでも聞くわよ』

 ここ数日の間に襲ってきた抱えきれないほどの出来事に、押しつぶされそうになっていた。

 父のことで私を支えてくれた柴崎さんは、遠く異国の地にいて連絡もままならない。それどころか、私自身が気軽に連絡をできるような立場ではなくなってしまった。

 身近にいて頼りにしていたはずの叔父は、今では敵対関係のようにある。彼によって、家も仕事も失った。

 いろいろと耐えきれなくて、叔母の言葉に甘えて涙交じりにすべてを打ち明けた。

『……そう』

 冷静さを欠き、話にまとまりがない。何度も言葉に詰まり、聞きづらかったはず。
 それでも叔母は、私の話を最後まで聞いてくれた。

『悠里ちゃん。あなたしだいだけど、あなたイタリアに来ない?』

 しばらくの沈黙の後に、叔母がそんなふうに言う。

「イタリアに?」

『ええ。日本にいても悠里ちゃんの味方はいないし、妊娠している以上は仕事もなかなか決まらないと思うわ』

 その通りだと、私もわかっている。

『聞く限り、悠里ちゃんは産みたいって思っているのよね?』

「……うん。仕事はなくしちゃったし、今のアパートもいつまでもいられないんだけど。でも、どうしても失う決断なんてできなくて」

 気持ちだけで、子どもを育てていけるわけがないことくらいわかっている。
 それでも私は、どうにかして産もうと足掻いている。
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