すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
『私には出産の経験がないけど、人生の先輩としてこれだけは言っておくわ。女手ひとつで子どもを育てていくのは、生半可な覚悟じゃできないわよ』

 叔母の本音としては、出産に反対なのだろう。それは当然で、ズキリと痛んだ胸に手を当てる。

「……想像している以上に大変なのは覚悟してる」

『はあ。私もね、甘いってわかっているのよ。でも、たったひとりの姪がこんなふうに追い詰められていたら、放っておけるわけないでしょ。ただね、相手の男性には話をすべきだと思うわよ?』

「それは……」

『ああ、いいの。悠里ちゃんの懸念もわかるし。あなたももう大人なんだから、協力はしても口出しをするつもりはないわ。とにかく、今の状態のあなたをひとりにしておけない。だって悠里ちゃんは、私の唯一のかわいい姪だもの』

 ひとりじゃない。味方はまだいるのだと、叔母の言葉に再び涙が込み上げてくる。

『イタリアに来なさい。少し前に、秘書のようなことをしてくれていた人が都合で退職しちゃったのよ。悠里ちゃんさえやる気があれば、私の秘書兼身の回りのお世話をするスタッフとして雇うわ。もちろん住み込みでね』

 これ以上ない好条件に、うつむきかけていた顔を上げる。

『ただし、こちらへ来るときは産む覚悟を決めてからよ。酷な話かもしれないけれど、イタリアはカトリックの国だから、人工中絶に反対の立場をとる医師が多いの。日本とは事情が違うわ』

 もとから産みたいと希望していたのだから、そこに迷いはない。それに、住むところを保証してもらえて仕事まであるなんて願ってもいない話だ。
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