すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
「いいの? 出産で働けない時期もあるのに。それに、セルジオはなんて言うか……」

『かまわないわ。もろもろ承知の上で話を持ち掛けているのよ。セルジオは私があなたをかわいがっているのを知っているし、反対するわけがない』

 叔母のパートナーとは、一度だけ彼が来日した際に紹介されている。紳士で物腰の柔らかい男性で、一途に叔母を想っているのは見ているだけでわかった。イタリア人らしい、情熱的な人だ。

 その場で叔母は、私のことを娘のようなものだと彼に紹介している。

『それなら、僕にとっても悠里は娘だね』

 そう言って、穏やかな笑みを浮かべていたのはしっかり覚えている。決して社交辞令なんかではなくて、たまに叔母がプレゼントだとなにかを送ってくれる際には、セルジオからのものもたくさん入っていた。

「私、イタリアに行きたい」

 お腹の子を守るには、もうそれしかない。

「助けてほしいの」

『悠里ちゃん……わかったわ。こちらはいつでも受け入れられる準備をしておくから、日本を立つ日が決まったら連絡をちょうだい』

「うん。ありがとう」

 通話を終えて、ふうと息を吐く。
 叔母頼みになってしまうけれど、先の見通しが持てたのは大きい。

「大丈夫。絶対に守るから」

 ぺたんこの下腹部に手を添えて、ここからは前だけを向いて生きていこうと覚悟を決める。
 先の見通しを持てた安堵からか、久しぶりに空腹を感じる。まずは自分が元気でいなければと、久しぶりにキッチンに立った。
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