すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 電車で空港へ行き、イタリア行きの便に乗り込む。
 席に座ると、もう大丈夫だと大きく安堵した。

 しばらくして余裕が出てきたところで、機内モードにしたスマホを指定されたWi-Fiにつないだ。

 父を亡くして無気力になっていた頃から今日まで、自分のことで精いっぱいだったため、世の中で起きていたことがまったくわからない。それに、これから暮らすイタリアの情報や妊娠についても知識を入れておきたい。

 まずはニュースからと、早速サイトを開く。
 政治家の不正やメジャーデビューしたアイドルグループの紹介、それからスポーツの国際大会で日本人が初優勝した記事が続く。

 いくつか国内のニュースが続いた後、海外の情報も流れてくる。その中に、アメリカの有名女優の婚約話も出てきた。

 たしか彼女は二十代後半だったはずだと思い出しながら、写真に視線を落とす。
 すらりと背が高く、体にフィットするドレス姿は凹凸のはっきりとした肉感的なプロポーションが伝わってくる。
 彼女が出演した映画をいくつか見たことあったが、その親が航空会社の社長を務めていることは初めて知った。

「え? お相手は、OAJの御曹司……?」

 真っ先に浮かんだのは、柴崎さんの顔だ。あの会社に、彼以外の親族の子息が所属しているかはわからない。

 嫌な予感に胸がざわめく。
 震える指で画面をスクロールした先に出てきたのは、〝柴崎拓真〟の名前だった。

「そんな……」

 私たちの間に、たしかなつながりがあったわけじゃない。
 帰国を待っていてほしいと言われて、その思わせぶりな態度からもしかして交際を申し込まれるのかもしれないと浮かれた。

 けれど、よくよく考えてみれば好きだとすら言われていない。
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