すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 OAJはもともと、彼女の父親の会社と業務提携をしていたようだ。少し前に二社間のトラブルが発生し、それを解決するために柴崎さんが渡米した。ふたりは、そのときに出会ったのだという。

『パパの会社のための結婚? バックグラウンドなんて、私たちには関係ないわ。一目会ったときから、お互いに惹かれ合ったのよ』とは、記事に書かれていた彼女の言葉だ。

 私たちが体をつなげたあの日。彼が仕事の都合だと大慌てで会社に向かったのも、急遽渡米が決まったのもこのトラブルのせいだと思われる。

 解決のために取引先の社長の娘と結婚をするなんて、私から見たら非日常的な話だ。うちのような小さな会社では、政略結婚なんて言葉は一度として出なかった。

 でも柴崎さんのような大企業の後継者ともなれば、あり得る話なのかもしれない。

 バタバタして連絡もままならないのは、本当に忙しくしていたからだけだったのか?
 記事の内容が正しいのなら、ふたりは彼の渡米からすぐに出会ったように読める。渡米前の柴崎さんは婚約なんて考えてもいなかったかもしれないが、すぐに話がまとまったために私への連絡を断ったのか。

 胸の痛みを無視して、彼女の写真を見つめる。

 すごく綺麗な人だ。家柄もよく、さらにトップ女優の座を自ら掴んだ実力もある。言葉の壁だって、柴崎さんは英語が堪能だから問題ない。さらに彼女は、彼のために日本語の勉強中だとも書かれている。それほど柴崎さんを慕っているのだろう。

 柴崎さんは提携の幅を広げるにあたってアメリカで新たなライセンスの取得をするようで、もうしばらく滞在するとある。これもまた、その女性と結婚することで決まった話なのだろうか。

 記事の締めくくりは、その間にふたりの関係もどんどん深まっていくのだろうと、祝福と冷やかすような明るい雰囲気で締めくくられていた。
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