すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
* * *

光太(こうた)。ほらおいで』

 仕事を終えて帰ってきたセルジオが、叔母にハグした後に私と光太に笑みを向ける。それから彼は、私の腕から息子の光太を受け取って頬に口づけた。

 光太はもうすぐ一歳になる。叔母やセルジオとはほぼ毎日顔を合わせているため、すっかり懐いている。

 イタリアに渡った私が最初に力を入れたのが、言語の勉強だった。
 幸いにも叔母とセルジオはベネチアに住んでいたため、英語が通じる。堪能とまではいかないもののカタコトなりに話せるため、なんとかやってこられた。

 ただ、やはりこちらで暮らす以上はイタリア語の習得が必要だ。ということで、叔母の秘書の仕事をする合間に勉強をしている。
そこは日本語も話せるセルジオが率先して協力してくれて、わからないことを教えてくれる。

「光太君、ごきげんね」

 セルジオに抱かれる光太の頬に、叔母も口づける。それから顔を上げた叔母に、セルジオが口づけた。

 彼はイタリア人らしく、とにかく情熱的だ。これくらいの触れ合いは当たり前だし、私の目の前であろうと、『綺麗だ』『愛してる』と叔母に愛を伝えることに余念がない。

 この暮らしにすっかり慣れている叔母も、それを当然だと受け取る。もちろん、彼女からも同じように返す姿を頻繁に見かけている。

 ふたりの仲睦まじい様子を目にするたびに、私には築けなかったものだとツキリと胸は痛む。
 でも同時に若い頃に大失恋をしてイタリアに渡ったと聞く叔母が、今は幸せそうなことに安堵もする。
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