すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 訪問先のカフェに到着し、しゃんと背筋を伸ばす。それから深呼吸をして、入口の扉に手をかけた。

『――どれもお客様に好評でね、私も気に入っているのよ』

 店主は三十代の女性で、私の訪問を歓迎してくれた。

『ほら、あのロッキングチェアなんて最高よ!』

 オシャレな店内は、すべての席にそれぞれ異なった一点物の家具を使用している。叔母の作品も数点あり、そのひとつがロッキングチェアだ。

 カフェで揺れる椅子はどうかと思ったが、店主はゆったりできるお店作りを心掛けており、ひとつくらいそんな椅子があっても面白いと採用した。

『座ると、すごくリラックスできるんですよね』

『そうなの!』

 叔母は製造までは手掛けていない。けれど自身のデザインが思う通りの形になっているのか、完成するまで細かく確認をしている。
 試作の段階で私も座らせてもらう機会があったが、座り心地もよくて最高だった。

『あっちの椅子は、クッションの赤い色が本当にかわいくて』

 そう言いながら店主が指さしたのは、もうひとつの叔母の作品だ。ひとりがけのラウンジソファーで、丸みを帯びたフォルムがかわいらしい。
 色は派手すぎないレトロな赤色を採用した。ナチュラルな雰囲気のこの店によく似合っている。

『ロッキングチェアもラウンジソファーも、それぞれをお目当てに週末ごとに訪れる客もいるのよ』

『それはよかったです』

 叔母の作品を店主が愛し、さらに客も贔屓にしてくれる。これ以上ない評価に、私も気分が高揚した。

『今度は壁際にディスプレイ用の棚を置きたいと検討しているの。そのときはまた、あなたのところにお願いするかも』

 そんな次につながる言葉をもらいながら、お店を後にした。
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