推し変には、ご注意を。



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翌る日も翌る日も、ねねさんはSNSで俺ではない推しの話をする。



『透くんのあのまっすぐな瞳。絶対に彼は大物になる!』

『今日も透くん、かっこいい!ライブ配信楽しみ!』

『透くん、大好き』



今日もスマホの画面に溢れる、ねねさんの〝透くん〟への愛の言葉に、俺の中の何かが確実におかしくなっていく。
そうして狂ってしまった俺は限界を迎え、倒れていた。

カーテンを閉め切った暗い寝室で、スマホの灯りだけがぼんやりと俺の顔を照らす。
ベッドの上で、俺は今日もスマホの画面をただただ見つめていた。

〝ねね〟を見ても、〝天音〟を見ても、そこにやはり俺への言葉はない。

ねねさんの一番星は、俺ではなくなってしまった。

〝ねね〟と〝天音〟。2つのアカウントを交互に見ていると、スマホにLINEの通知が表示された。
「人気アイドルromance翡翠、体調不良によるスケジュールキャンセル」という文字に、自分のことのはずなのにどこか他人事に思えてしまう。

…何やってるんだろ、俺。

スマホをその辺に置いて、まぶたを閉じる。

俺がここまで頑張って来れたのも、ねねさんがいたから。
崩れずに耐えられたのも、ねねさんがいたから。

ねねさんの一番星として、輝いていたかったから。

それが今はどうだろう。
俺はねねさんの一番星でもなんでもない。

ただの星屑になってしまった。

どうすれば、俺はねねさんの一番星になれるのだろう。



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