35歳独身、年下後輩に溺愛されています
「狭山、この案件頼む。」

部長が引き出しから一つのファイルを取り出し、机の上に置いた。

「……またですか。」

思わず本音がこぼれる。

「頼むよ。おまえしかやれる奴がいないんだ。」

そう言われて、胸の奥が少しだけざわついた。

頼られるのは、嫌いじゃない。

仕事を任されること自体は、むしろ誇らしい。

でも、その言葉の先にあるものを、私はもう知っている。

——評価には、つながらない。

「私の他にも、できる人はいるんじゃないですか」

部長は椅子の背もたれにもたれかかり、少しだけ目を細めた。

「どうした? 何か不満でもあるのか?」

「いえ、別に。……これ、やっておきます」

そう答えて、私は軽く頭を下げた。

中堅社員。

仕事は増え、任される範囲も広がっていくのに、肩書きは変わらない。

できることが増えるほど、責任だけが静かに積み重なっていく。

その重さを、誰にも見せないまま。
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