酒好きがバレて追放された元聖女ですが、不眠症の辺境伯様と【秘密の晩酌】はじめました 〜昼は冷徹、夜は甘々。ほろ酔い旦那様の執着愛が止まりません〜

4 雪解けのポトフ、あるいは不機嫌な旦那様の「独り占め」宣言

 ガシャーン! ガシャーン!

 城門の方から、金属がぶつかり合うような重い音が響いてきた。
 外は猛吹雪だというのに、何事だろうか。

 私は厨房から顔を出した。

「……酷い」と思わず声が漏れた。

 帰還したのは、この辺境伯領を守る騎士団だった。
 けれど、その姿は「精鋭」と呼ぶにはあまりに痛々しい。

 鎧の隙間には雪が詰まり、髭や髪は凍りついてツララができている。
 何より、彼らの顔色は死人のように青白く、生気が感じられない。
 担架で運ばれている怪我人も多い。

「申し訳ありません、閣下……。魔獣の動きが予想以上に活発でして……」

 先頭に立つ巨漢の騎士が、苦渋の表情で頭を下げていた。
 彼は騎士団長のヒャルマールだ。
 熊のような体躯の持ち主だが、今はその背中が小さく見える。

「皆、よく生きて戻った」フロスティ様が皆に労いの言葉をかける。「まずは食事をして体を温めろ」

 しかし。
 食堂に運ばれてきた食事を見て、騎士たちの表情がさらに曇った。

 皿の上に乗っていたのは、カチコチに凍った黒パンと、板のように硬い干し肉。
 スープはあるけれど、運ばれてくる間に冷めて表面に膜が張っている。

「……これでは、部下の体力も戻らん……」

 ヒャルマール団長が悔しそうに拳を握りしめた。

 この城の食料事情は限界ギリギリなのだ。
 新鮮な食材は届かないし、調理する薪も節約しなければならない。

(……まずい)

 私は柱の陰で危機感を募らせた。

 騎士団が倒れれば、この城の守りが薄くなる。
 城が落ちれば、私の平穏な飲んだくれライフも終わる。
 地下のワインセラーが魔獣に荒らされるなんて、想像したくもない!

(やるしかない。私の「晩酌」を守るために!)

 私はエプロンの紐をキュッと締め直した。
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