酒好きがバレて追放された元聖女ですが、不眠症の辺境伯様と【秘密の晩酌】はじめました 〜昼は冷徹、夜は甘々。ほろ酔い旦那様の執着愛が止まりません〜
その日の夜。
私は出来上がったばかりのシードルを瓶に詰め、厨房でいつもの人を待っていた。
雪で冷やしたシードルの瓶は、表面に水滴がついて美味しそうだ。
ガチャリ。
扉が開く。
現れたのは、フロスティ様だった。
昨夜、アヒージョで復活してからの彼は、なんだか雰囲気が柔らかい。
というか、距離感が近い。
「今日は帰りが遅かったな」
彼は私の隣の席に座ると、すんっと鼻を鳴らした。
不機嫌そうに見えるが、その瞳は私の様子をじっと観察している。
「こんばんは。お土産がありますよ」
私はグラスにシードルを注いだ。
シュワシュワと白い泡が立ち、弾ける音が心地よく響く。
「今日はリンゴ農園に行っていたそうだな」
彼はグラスを受け取りながら言った。
「私の領民が、君のことを『豊穣の女神』と呼んで拝んでいたぞ。報告書によると」
「……耳が早いですこと」
「君のおかげで、農民たちの生活が守られた。……礼を言う」
フロスティ様は素直にそう言うと、グラスを傾けた。
喉元を炭酸が通過する刺激。
彼は目を細め、ほう、と息を吐く。
「爽やかだ。リンゴの香りが鼻に抜ける。君の作るものは、どれも美味いな」
「でしょう? 落ちたリンゴも、こうして手を加えれば美味しいお酒に変わるんです」
私が得意げに胸を張ると、彼はふと真顔になって私を見つめた。
「……君のようだ」
「えっ?」
「聖女の座を追われ、傷物扱いされてここにきた君が……今、一番輝いている」
さらりと。
とんでもない口説き文句を言われた気がする。
私がポカンとしていると、彼は椅子ごと距離を詰めてきた。
近い。
肩と肩が触れ合う距離だ。
「……君が優秀すぎて、領主としての私の立場がないな」
彼は自嘲気味に笑い、そして私の肩に、こてんと頭を預けてきた。
あ、まただ。
この人、私をクッションか何かだと思ってない?
「……だが、誇らしい。君が私の妻で良かった」
耳元で囁かれる低音ボイス。
シードルのアルコールも相まって、私の顔も熱くなる。
「……白い結婚、じゃなかったんですか?」
「……契約内容は、見直しが必要かもしれないな」
彼は私の肩に顔を埋めたまま、くすりと笑った。
シードルの泡が、パチパチと弾ける音がする。
外はまだ寒い冬だけれど。
寄り添う体温と、甘いお酒のおかげで、今夜も寒くはなさそうだ。
(……ま、これも悪くないか)
私は彼にもたれかかられたまま、自分のグラスを空けた。
――――――――――――――――――
【★あとがき★】
「面白かった」
「続きが気になる」
「主人公の活躍が読みたい」
と思ったら
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「ひとこそ感想」・「感想」も是非!
私は出来上がったばかりのシードルを瓶に詰め、厨房でいつもの人を待っていた。
雪で冷やしたシードルの瓶は、表面に水滴がついて美味しそうだ。
ガチャリ。
扉が開く。
現れたのは、フロスティ様だった。
昨夜、アヒージョで復活してからの彼は、なんだか雰囲気が柔らかい。
というか、距離感が近い。
「今日は帰りが遅かったな」
彼は私の隣の席に座ると、すんっと鼻を鳴らした。
不機嫌そうに見えるが、その瞳は私の様子をじっと観察している。
「こんばんは。お土産がありますよ」
私はグラスにシードルを注いだ。
シュワシュワと白い泡が立ち、弾ける音が心地よく響く。
「今日はリンゴ農園に行っていたそうだな」
彼はグラスを受け取りながら言った。
「私の領民が、君のことを『豊穣の女神』と呼んで拝んでいたぞ。報告書によると」
「……耳が早いですこと」
「君のおかげで、農民たちの生活が守られた。……礼を言う」
フロスティ様は素直にそう言うと、グラスを傾けた。
喉元を炭酸が通過する刺激。
彼は目を細め、ほう、と息を吐く。
「爽やかだ。リンゴの香りが鼻に抜ける。君の作るものは、どれも美味いな」
「でしょう? 落ちたリンゴも、こうして手を加えれば美味しいお酒に変わるんです」
私が得意げに胸を張ると、彼はふと真顔になって私を見つめた。
「……君のようだ」
「えっ?」
「聖女の座を追われ、傷物扱いされてここにきた君が……今、一番輝いている」
さらりと。
とんでもない口説き文句を言われた気がする。
私がポカンとしていると、彼は椅子ごと距離を詰めてきた。
近い。
肩と肩が触れ合う距離だ。
「……君が優秀すぎて、領主としての私の立場がないな」
彼は自嘲気味に笑い、そして私の肩に、こてんと頭を預けてきた。
あ、まただ。
この人、私をクッションか何かだと思ってない?
「……だが、誇らしい。君が私の妻で良かった」
耳元で囁かれる低音ボイス。
シードルのアルコールも相まって、私の顔も熱くなる。
「……白い結婚、じゃなかったんですか?」
「……契約内容は、見直しが必要かもしれないな」
彼は私の肩に顔を埋めたまま、くすりと笑った。
シードルの泡が、パチパチと弾ける音がする。
外はまだ寒い冬だけれど。
寄り添う体温と、甘いお酒のおかげで、今夜も寒くはなさそうだ。
(……ま、これも悪くないか)
私は彼にもたれかかられたまま、自分のグラスを空けた。
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