酒好きがバレて追放された元聖女ですが、不眠症の辺境伯様と【秘密の晩酌】はじめました 〜昼は冷徹、夜は甘々。ほろ酔い旦那様の執着愛が止まりません〜

8 硬すぎるパンに嫌気がさしたので聖女の力で柔らかいパンをつくったら感激されました

 ガンッ!!

 鈍い音が、朝の食堂に響き渡った。

「……嘘でしょ?」

 私の手にあるナイフは、対象物に傷一つつけられずに弾かれていた。
 皿の上にあるのは、黒い塊。
 この辺境の地で主食とされている『黒パン』だ。

 これは食べ物?
 それとも鈍器?

 硬い。
 あまりにも硬い。
 もはや建材レベルだ。

 試しにスープに浸してみる。
 少し待ってから齧ってみた。

 ガリッ。

 変わってない!

 表面が少し濡れただけで、芯は岩のように硬い。
 保存性を重視しすぎて、食用としての尊厳を失っている。

 こんなの、私の求めている『幸せな食卓』じゃない。
 美味しいおかずやお酒があっても、主食がこれではテンションがだだ下がりだ。

 私はフォークを置いた。

(食べたい……。ふわっふわで、もっちもちの、白いパンが食べたい! トーストすればサクッ、中はしっとり。バターがじゅわ〜っと染み込む、あのパンが!)

 一度想像してしまったら、もう止まらない。
 パン欲が暴走する。

 よし、決めた。

 私は立ち上がった。
 パン革命、開始だ。
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