祝福のあとで
第10章 名前のない一杯
 直が案内したのは、
 Bar Afterから少し離れた通りにある、小さな店だった。

 看板は控えめで、
 遠くからは気づかないくらいの灯り。

「ここです」

 そう言って、先に扉を開ける。

 中に入ると、
 落ち着いた木の匂いと、低めの照明。

 カウンターは短く、
 テーブルも二つだけ。

 静かだけれど、閉じすぎていない空気。

「いらっしゃい」

 カウンターの中から、
 年上の男性が声をかけてくる。

「お疲れさま」

 直が短く返す。

 説明はいらないらしい。

「今日は、客でいい?」

「もちろん」

 それだけのやり取り。

 ひかりは、
 “仕事の直”ではない彼を見るのが、少し不思議だった。
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