祝福のあとで
打ち上げの誘いを受けたのは、
 披露宴が終わってから、
 少し時間が経った頃だった。

 ほんの一、二週間。

 長いようで、
 短いはずのその間に、
 ひかりは一度もBar Afterに行けていなかった。

 頻繁に足を運ぶようになってからは、
 初めてのことだった。

 仕事が立て込んでいたわけでも、
 体調を崩していたわけでもない。

 ただ、
 タイミングが合わなかった。

 ——そう思うことにしていた。

 だから、
 あきからの「打ち上げ」の誘いは、
 ひかりにとって、受け入れやすかった。

 仕事として区切りをつけるには、
 ちょうどいい。

 感情を持ち込まなくていい理由が、
 そこにあった。

 約束の時間より、少し早く駅に着く。

 平日の夜。
 仕事帰りの人たちが、足早に行き交っている。

 ひかりは、
 スマートフォンを確認してから、画面を伏せた。

 Bar Afterの灯りが、
 ふと、頭をよぎる。

 ——久しぶりに行きたいな。

 そう思った自分に、
 小さく驚く。

「待たせました」

 背後から声がして、振り返る。

 あきが立っていた。

 スーツではないけれど、
 仕事終わりだとすぐにわかる装い。

「いえ、今来たところです」

 少しだけ距離を保った声で答える。

「店、近くです」

「お願いします」

 二人で歩き出す。

 並んで歩く距離は、
 昔と変わらないはずなのに。

 ひかりは、
 それを“戻った”とは、思わなかった。
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