祝福のあとで
店は、駅から少し歩いたところにあった。

 ——確かに、近い。

 看板は明るくて、
 中から人の声が漏れている。

 扉を開けると、
 温かい空気と一緒に、にぎやかな声が流れ込んできた。

「いらっしゃいませ」

 テーブルが並び、
 仕事帰りのグループがグラスを掲げている。

 ひかりは、
 その光景を一瞬だけ見渡してから、席に案内された。

 ——居酒屋だ。

 当たり前のことを、
 心の中で確認する。

 駅から近くて、
 長居しなくてもいい。

 打ち上げには、ちょうどいい。

 カウンターはない。
 照明は明るい。
 グラスの音より、笑い声の方が大きい。

 Bar Afterとは、まるで違う。

 ……比べて、どうするの。

 ひかりは、小さく息を吐いた。

 ここは、仕事の打ち上げだ。

 落ち着くとか、余白とか、
 そういう場所じゃなくていい。
< 54 / 73 >

この作品をシェア

pagetop