祝福のあとで
会計を済ませるころには、
店内の客も、少しずつ減っていた。
直は席を立ち、
自然な流れで、ひかりの横に並ぶ。
外に出ると、
夜の空気が、昼より少しやわらかい。
並んで歩き出しても、
どちらからともなく、歩幅が揃った。
会話は、ない。
でも、沈黙は重くなかった。
さっきまで向かい合っていたのに、
今は同じ方向を見て歩いている。
それだけで、
距離が変わった気がした。
信号の前で、立ち止まる。
赤い灯り。
直が、前を見たまま口を開く。
「……今日は」
一拍置くように、でも止まらずに。
「よかったです」
理由は言わない。
ひかりも、聞かない。
「私も」
それだけで、十分だった。
信号が変わる。
また歩き出す。
角を曲がる手前で、
直が足を止めた。
「また」
ほんの少し間を置いて、
「タイミングが合えば」
誘いとも、確認ともつかない言い方。
ひかりは、少しだけ考えてから答えた。
「……はい」
日付も、約束も、決めないまま。
でも、
次があることだけは、
なぜかはっきりしていた。
「じゃあ」
「おやすみなさい」
短い言葉を交わして、
それぞれ違う方向へ歩き出す。
数歩進んでから、
ひかりは、胸の奥を確かめる。
急いで答えを出さなくてもいい。
名前をつけなくてもいい。
ただ、
今はこの距離が、ちょうどいい。
そう思えたことが、
何よりも静かな変化だった。
ひかりは、
夜の中を歩きながら、
小さく息を吐いた。
――今日は、
ちゃんと“自分の時間”だった。
店内の客も、少しずつ減っていた。
直は席を立ち、
自然な流れで、ひかりの横に並ぶ。
外に出ると、
夜の空気が、昼より少しやわらかい。
並んで歩き出しても、
どちらからともなく、歩幅が揃った。
会話は、ない。
でも、沈黙は重くなかった。
さっきまで向かい合っていたのに、
今は同じ方向を見て歩いている。
それだけで、
距離が変わった気がした。
信号の前で、立ち止まる。
赤い灯り。
直が、前を見たまま口を開く。
「……今日は」
一拍置くように、でも止まらずに。
「よかったです」
理由は言わない。
ひかりも、聞かない。
「私も」
それだけで、十分だった。
信号が変わる。
また歩き出す。
角を曲がる手前で、
直が足を止めた。
「また」
ほんの少し間を置いて、
「タイミングが合えば」
誘いとも、確認ともつかない言い方。
ひかりは、少しだけ考えてから答えた。
「……はい」
日付も、約束も、決めないまま。
でも、
次があることだけは、
なぜかはっきりしていた。
「じゃあ」
「おやすみなさい」
短い言葉を交わして、
それぞれ違う方向へ歩き出す。
数歩進んでから、
ひかりは、胸の奥を確かめる。
急いで答えを出さなくてもいい。
名前をつけなくてもいい。
ただ、
今はこの距離が、ちょうどいい。
そう思えたことが、
何よりも静かな変化だった。
ひかりは、
夜の中を歩きながら、
小さく息を吐いた。
――今日は、
ちゃんと“自分の時間”だった。