祝福のあとで
そのまま、
年が変わっても、
生活は大きく変わらなかった。
仕事は続く。
予定は埋まる。
一日は、相変わらず正確に終わっていく。
それでも。
仕事を終えて外に出た夜、
気づいたときには、
足が、あの通りへ向かっていた。
Bar Afterの灯りは、
以前と変わらず、控えめにそこにあった。
ひかりは、扉の前で一度だけ立ち止まる。
——久しぶりだ。
そう思った瞬間、
胸の奥が、わずかにざわついた。
逃げる理由も、
入らない理由も、見つからない。
ひかりは、
深く息を吸って、扉を押した。
木の香り。
低く流れるジャズ。
変わらない空気が、
静かに迎える。
「いらっしゃいませ」
カウンターの奥で、
直が顔を上げた。
一瞬、目が合う。
驚きは、ほんのわずか。
それから、
いつもと同じ調子で、彼は言った。
「……お久しぶりですね」
その一言で、
胸の奥に残っていた感覚が、
はっきりと形を持った。
ひかりは、
何も言わずに、カウンターへ向かう。
いつもの席。
グラスが置かれる音。
「今日は、軽めにしますか」
「はい」
短い返事。
それだけで、
肩の力が抜けていくのがわかった。
——ああ。
ここだ。
ひかりは、
グラスを手に取って、静かに思った。
探していたわけじゃない。
答えを出しに来たわけでもない。
それでも。
この場所に戻ってきた理由を、
もう、誤魔化せなかった。
胸の奥が、
ゆっくりと、あたたかくなる。
それが何かを、
まだ言葉にしなくてもいい。
ただ、ひかりは知った。
この夜に戻ってきたのは、
偶然じゃない。
年が変わっても、
生活は大きく変わらなかった。
仕事は続く。
予定は埋まる。
一日は、相変わらず正確に終わっていく。
それでも。
仕事を終えて外に出た夜、
気づいたときには、
足が、あの通りへ向かっていた。
Bar Afterの灯りは、
以前と変わらず、控えめにそこにあった。
ひかりは、扉の前で一度だけ立ち止まる。
——久しぶりだ。
そう思った瞬間、
胸の奥が、わずかにざわついた。
逃げる理由も、
入らない理由も、見つからない。
ひかりは、
深く息を吸って、扉を押した。
木の香り。
低く流れるジャズ。
変わらない空気が、
静かに迎える。
「いらっしゃいませ」
カウンターの奥で、
直が顔を上げた。
一瞬、目が合う。
驚きは、ほんのわずか。
それから、
いつもと同じ調子で、彼は言った。
「……お久しぶりですね」
その一言で、
胸の奥に残っていた感覚が、
はっきりと形を持った。
ひかりは、
何も言わずに、カウンターへ向かう。
いつもの席。
グラスが置かれる音。
「今日は、軽めにしますか」
「はい」
短い返事。
それだけで、
肩の力が抜けていくのがわかった。
——ああ。
ここだ。
ひかりは、
グラスを手に取って、静かに思った。
探していたわけじゃない。
答えを出しに来たわけでもない。
それでも。
この場所に戻ってきた理由を、
もう、誤魔化せなかった。
胸の奥が、
ゆっくりと、あたたかくなる。
それが何かを、
まだ言葉にしなくてもいい。
ただ、ひかりは知った。
この夜に戻ってきたのは、
偶然じゃない。