祝福のあとで
第16章 境目を越えた夜
恋だと気づいたからといって、
すぐに何かが変わるわけじゃない。

ひかりは、
その夜も、
答えを出さないまま店を出た。

ただ、
もう戻れない場所があることだけは、
はっきりしていた。



翌日も、
その次の日も、
仕事は変わらず続いた。

進行表を確認して、
連絡を返して、
式の段取りを整える。

いつも通りの一日。

——なのに。

気づくと、
頭のどこかで、
同じことを考えている。

どうしたらいいんだろう。

好きだとわかったあと、
人は、何をすればいいんだろう。

誰かを好きになることは、
久しぶりだった。

正確に言えば、
比べるほどの経験が、
なかった。

どう始めて、
どう進めて、
どこで名前をつけるのか。

その全部が、
ひかりには曖昧だった。
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