執愛滾る脳外科医はママと娘を不滅の愛で囲い込む
「なんで小児病棟に?」
 私を立ち上がらせてくれながら、蓮斗くんが尋ねてきた。
「えっと……落とし物を届けに」
「そうか。瑠璃は昔から方向音痴だったもんな。小児病棟に行くには、あそこの通路から行くといい」
 動揺しているわけでもない、落ち着いたトーン。
 あんなところを見られても、彼は実に平然としている。まるで私の方が見られた側みたい。動揺が収まらなくて、視点も定まらないのだから。
「……教えてくれてありがとう」
 果たしてどんな顔をすればいい?
 さっぱり分からないのだが。
 頭に蘇ってくるふたりのさっきのやり取り。
 悶々と考え込んでいると、彼の胸ポケットにある携帯が震えた音でハッと我に返った。
「悪い。呼び出しだ」
 蓮斗くんが携帯を手に取りながらそう言う。
「あ、うん。早く行ってあげて」
「ああ」
 どうして私、こんなにも動揺しているんだろう?
 足早に駆け出した蓮斗くんの背中を見つめながら、私は静かに息を吐いた。
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