【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 その後、舞踏会は表面上、穏やかに過ぎていった。

 一見にこやかではあるが、エメリアが王宮から去った話は知っているのだろう。ギルフォードの隣にいるエメリアに向けられる貴族たちの笑顔には、隠し切れない含みがある。

「皇妃殿下は相変わらず美しい、です……ね」
「恐縮です」

 小さい頃から聞いているお世辞に微笑みを返すと、なぜか相手がひるんだ。

「?」

 後ろでギルフォードがにらんでいることも気づかないエメリアが首を傾げると、相手は今度はエメリアにくっついてるフレンを見て言った。

「そして本当に愛らしい姫君で」
「そうでしょう!」

 間髪を容れずに握りこぶしをつくって同意する。
 そこで周りにいる貴族たちからのびっくりした表情に気づいて、こほんと咳払いをする。

(冷静に、冷静に)

 それにしても愛娘一人手離しに褒められないとは、改めて面倒な場所である。

 扇子の陰から、ひそひそと笑われているのを感じるが、この頃にはエメリアももう開き直ってきた。

 ギルフォードの体面など知ったことか。フレンの可愛さを存分にアピールするのだ。

「フレン、挨拶をしましょうか」
「……」

 フレンがエメリアを見上げてこくりとうなずく。

 『フレンです! よろしくおねがいします!』といつものように元気に挨拶をするのかと思いきや――ドレスを着たフレンは、すっと片足を下げてドレスの端を摘んだ。

「……フレンです。どうぞおみしりおきを」
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