【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 王族の証である、月銀の髪がさらりと肩から滑り落ちる。
 それはエメリアから見ても完璧な礼だった。

(……あれぇ?)

 エメリアは心の中で冷や汗をかいた。

 確かに村でも最低限の礼儀作法は教えたが、まだ三歳。原作でも姫としての扱いを受けずにいたから、それでいいかと思っていたのだが……。

 フレンの淑女の礼を見て、招待客たちがぽかんと口を開ける。

 顔を上げた彼女の周りには光を帯びた妖精が優雅に飛んでいた。
 それは娘を見慣れているはずのエメリアからしても、息をのむほど幻想的な光景だった。

 礼を終えたフレンはエメリアを振り返って、満足そうな顔で鼻から息を吐いた。

「――」

 フレンなりに周りの様子を見て学んだのだろうか、そしてエメリアを振り返ってのこのどや顔。

 親バカゲージなど振り切れるのに十分だ。

「――偉いわフレン、よくご挨拶できたわね! そしてとっっっっても可愛いわ!」
「とうぜんです、おかあさまのむすめなので」

 むふんと胸を張るフレンを抱きしめた。
 その体温はとても高い。

 エメリアはこちらを見ているギルフォードを振り仰いだ。

「陛下、私たちはそろそろお暇してもよろしいでしょうか」
「……ああ、もちろん」

 ギルフォードは詳細を聞かずに頷いた。
 大広間に入ってから一時間半ほどが経っていた。ずっと気を張っていただろうフレンが眠くなっていると知る。
 
「え、でも、……まだ」
「もう十分よフレン。よくがんばったわね」

 そう言って頭を撫でると、エメリアにしがみついたフレンはこくりと頷いた。
 こちらに体重を預ける小さな身体を抱き上げる。

(ぐっ)

 しかしさすがに心の中でうめいた。
 コルセットは、しゃがむのも抱き上げるのも適していない矯正具である。

「では、失礼いたします」

 挨拶をしてエメリアは大広間から出た。
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