【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
『そうです。とくにおかあさまのクッキーがすきです。フレンもだいすきです』

 昨日部屋でフレンがそう言った時に、思いついたのだ。
 そういえば村から戻ってきてから、いろいろありすぎて自分で料理をすることも忘れていた。

(手を動かしながら、ついでに、状況の整理をしよう)

 そう思いながら、やわらかくなったバターと砂糖をボウルに入れた。


 まず、ここは前世で読んでいた、フレンが主役の小説の世界。

 辛い思いをしながらも健気に成長した不幸系ヒロインのフレンが、王太子に溺愛されながら、降りかかるさまざまな困難に立ち向かう話だ。

 物語のヒーローはイヴァン。隣国の王太子である彼が、フレンをべたべたに甘やかしてくれる。

(はず)

 手にくっつく生地を整形しながら、エメリアは自分に言い聞かせる。

 二人の最大の敵は、継母メレディス。愛称メリー。

 エメリアが死んだ後に皇妃になった彼女は、自分に夢中になった皇帝ギルフォードをいいことに王宮で好き放題する。
 妖艶な、絶世の美女。そして……人を魅了する魔法を使える。

 彼女は厳密には人間ではない。妖精王と対峙する『悪い妖精』だ。

 眠り姫の、呪いをかけた妖精のような存在といえばいいのだろうか。
 欲しいものはすべて手に入れないと気が済まない性質。彼女にとっては、妖精の愛し子の力を発現していないただの子どもであるフレンは取るに足らない存在だった。

 王宮から追放されたフレンが、イヴァン王太子と結ばれたことで対抗心を燃やし邪魔をしてくるのだ。

(とはいえ、最後の結末まではわからないのよね)
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