【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 その夜、エメリアは昨夜と同じように部屋にイヴァンを招き入れた。
 今日は、絵本を用意した。

「フレンに読むので、殿下も一緒にどうでしょうか」

 膝に二人を乗せて、読み聞かせる。
 
 子どもに人気の、カエルの王子様とお姫様が一緒に冒険する話だ。フレンはこのシリーズが大好きで、何度読んでも目をキラキラさせる。

「むかしむかし、あるところに……」

 そうしてページをめくり、最後まで読み終わる頃には二人ともすでに寝てしまっていた。

 起こさないようにそっとベッドにおろす。

 幸せそうに寝ている二人を見ていると、エメリアもふあ、と欠伸が出た。

(ちょっと、疲れてるかも)

 村での農作業の疲れとはまた違う。
 常に皇妃としてのふるまいを求められる王宮では、いつも気を抜けない。姿勢も言動も。

 エメリアは公爵令嬢として、親の期待に応えて厳しく育てられたが、ここでのプレッシャーはレベルが違っていた。

(生まれた時から、そんな場所で生きているのよね)

 二人の寝顔を見ながら、思い出したのは昼間のギルフォードの戸惑う表情だ。
 もしかしたらあれは、初めて見る彼の素の表情かもしれない。

 今までの義務と責務に忠実なギルフォードなら、イヴァンたちの申し出を決して引き受けなかっただろう。

 フレンの『おとうさま』呼びといい、何かがまた変わってきているのを感じる。

 それは好ましい変化のように感じた。エメリアの計画にとっても。
 そう言い聞かせて、エメリアもベッドに横になった。





 ぎし。
 眠りについてどれくらい経ったのか、わずかなベッドの軋みを感じてエメリアの意識が浮上した。
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