【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
(――ん……?)

 次に目が覚めた時には、エメリアは誰かに抱きしめられていることに気づいた。

 温かい腕の中で、逞しい胸元にもたれかかっている。

 窓の外から鳥の声が聞こえる中、これは誰だろうと顔を上げて――……。

「ひ……っ、!」

 エメリアは悲鳴を上げかけるのをなんとか止めた。
 ギルフォードだ。エメリアを抱きしめた彼は、目をつむって静かに眠っている。

 ぎこちなく首を動かして振り返ると、背中側にはイヴァンとフレンがすやすや健やかに寝ていた。

(と、とにかく、起きないと……)

 しかしがっちりと抱きしめられて振りほどけない。起こさないよう静かに奮闘したが、しばらくしてエメリアは諦めた。

「はぁ……」

 息を吐いてギルフォードを見る。

 初夜の翌日、起きたときにはすでにいなかったので、彼の寝顔を見たのは初めてだ。

 いつもは冷たい美貌だが、寝ると少し幼く感じる。さらりと、フレンと同じ銀髪が頬を滑った。

「……」

 そっとその髪に手を伸ばしたところで――ギルフォードが起きた。

「……」
「……」

 眠そうな顔のギルフォードと至近距離で、無言で見つめ合う。
 わずかに彼の眉間にしわが寄った。

「なぜここにいる」
「それはこちらのセリフなのですが……!?」

 人のベッドに入って言うセリフではない。ちなみにあくまで小声だ。

 形式上は夫婦なので、彼が寝室に入ることも一緒に寝ていても警備的に問題はない。

「なぜここにいるのですか。というか離してください」
「……ああ、俺が抱きしめていたのか」

 そこでようやく気づいたというように、力がゆるまる。

 エメリアは慌てて起き上がった。お互い服は乱れていないのを思わず確認してしまう。

 初夜で義務的に抱かれたことは朧げながら覚えている。それ以来、一緒に寝たことはなかったはずなのに。

 少し遅れて、ギルフォードも身を起こした。

 自分の手をじっと眺めていた彼は、エメリアを見た。

「解決方法を思いついた」
「?」
「昨日の話だ。君はいくら言っても、イヴァン殿下を寝室に招くのをやめないだろう」
「そうですね」

 寝ているイヴァンをチラリと見たギルフォードが言葉を続ける。

「それなら俺も一緒に寝ればいいだけの話だった」
「え」

 ギルフォードは、あくまで真面目な顔をしている。

「だが、そうなるとさすがに狭いな。今日中に四人寝られる新しいベッドを取り寄せよう」
「……なんでそうなるんですか!」

 思わず小声で叫んでいた。
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