【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 エメリアは昔の――前世の夢を見た。

 両親は幼い頃に離婚して、母は仕事に忙しく小学校に入る前からいつも一人で眠っていた。
 そしてそのうちに新しい恋人ができたと、母は自分を施設に入れた。

 参観も運動会にも、母は来たことはない。
 楽しそうにしている皆を横目に、教室で一人でパンを食べるのが当たり前だった。

 転機があったのは、就職してから。
 仕事をすればするほど認めてもらえる。それは……不思議な感覚だった。

 与えられなかった愛情に飢えるように。頑張って頑張って、感謝されて、初めて自分がここにいていいと認められた気がした。

『――さん、これもよろしく』
『おかげで助かるわぁ』

 皆から仕事を振られて、帰る時間どころか眠る暇もない。
 眠るのはただの作業だ。忙しくしていれば、何も考えずに済む。

 そんなある日、自分を捨てた母が金を借りにきた。もう二度と顔も見たくないと思っていたのに、頼まれれば断らずに貯金を少しだけ渡した。

 その後も何度も母は金の無心に来た。
 さらに忙しく仕事をして、とある夜のこと。

 日頃の睡眠不足がたたり、足元がおぼつかないまま家に帰るところで、青信号で突っ込んできたトラックを避けきれず――





 朝の光にエメリアは目を覚ました。

 隣には、すよすよと眠っているフレン。
 その向こうにあどけなく眠るイヴァン。さらに向こうにギルフォード。

 どこまでも平和な、当たり前の光景を前にエメリアは頬に手を当てた。

(なにか、夢を見ていたような……?)

 だが思い出せないということは、もう気にすることもないのだろう。

 ベッドの上で伸びをする。

 今日もいい天気になりそうだ。
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