【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
「え?」
「ようせいさんどうしで連絡がとれるようになるくんれんです。あなたにわたすのはふほんいなのですが、おかあさまが心配しているので」

 教授からの課題。
 イヴァンとエメリアが目をぱちくりさせていると、フレンの手に乗っていた妖精が、彼のまわりを回った。

「……いいの?」
「かすだけです」

 そんな幼子のやりとりを、口に手を当てて震えながらエメリアが見ていた。

(――尊い!)

 しつこいようだが原作で読んだ。
 
 隣国で発生した魔獣討伐に向かうイヴァンに、フレンが妖精を渡す。離れ離れになる二人のとても盛り上がるシーンだ。まさかこの目で見られるとは。

 セリフは多少――だいぶ違うが問題はない。

「風と水のまほうをつかえます。あなたといっしょでおかしが好きなので、いっしょにたべるといいでしょう」
「お菓子好きは皇女殿下も大概……失礼」

 イヴァンの言葉にフレンがじろりと睨む。
 おそるおそるイヴァンが宙に手を伸ばすと、妖精はふわりとその指先に腰をおろした。

「……ありがとう、大事にする」
「かすだけです」
 
 同じことを言って、フレンがぷいっと顔を背ける。

 その横顔は少し寂しそうだ。それは、妖精だけでなくイヴァンともお別れするからだと思うことにする。
 なんだかんだ喧嘩しながら、楽しそうにしていたし。

 次会う時には、イヴァンはどんな少年になっているだろうか。

 その日を楽しみに、エメリアは妖精をともなった小さな背中を見送った。
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