【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
「ではおかあさま、おべんきょうに行ってきます!」
「ええ、いってらっしゃい」

 試着室の一件の後、妖精学の授業のあるフレンと別れてエメリアはその小さな背中を見送った。

 廊下で一人息を吐く。結局仕立て屋に泣きつかれて、一着だけ揃いのものを注文するはめになった。
 後は揃いにならないように母娘二着ずつお願いしている。

 それにしても頭が痛い。

(対応に、すごく困る)

 ギルフォードがフレンを大事にしてくれるのは嬉しいが、彼とは適度な距離を保たねばならない。
 イヴァンが国へ戻り、夜一緒に寝ることはなくなって、元通りと思っていたのに……。

「……っ」

 窓から入る日差しに、エメリアは眩暈がして壁に手をついた。
 着替えの楽しさにはしゃいでしまったからだろうか。一瞬のことなのに、わずかに不安が顔を出す。

 原作のエメリアが死ぬ時期は近づいているが、自分はいたって健康なはずだ。
 少なくとも心は何も問題はない。
 ない、はず。


「――エメリア」

 そこで、声をかけられて顔を上げた。
 うす暗い廊下の先から現れたのは、黒い杖を持ち、白い髭を蓄えた男性だ。
 にこにこと朗らかに微笑む好好爺の顔を見てエメリアは目を見開いた。

「……お父様……――いえ、エヴァン卿」
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