【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 エヴァン公爵。
 エメリアが王宮を出て……いや、皇妃になったエメリアがギルフォードに見向きもされていないことを知って以来、姿を見ていなかった父その人。

「エメリア、元気にしていたか」
「ええ、エヴァン卿もお変わりなさそうで」

 お互い笑顔で言葉を交わすが、親しさはない。

 彼からは三年前、離縁状を叩きつけられている。
 「責務を勝手に放り出すような者は、エヴァン公爵家の者ではない」という宣言とともに。
 フレンを王宮から離して一人で育てようとしていたエメリアとしても、そちらの方が都合がよかった。

 誤算は、ギルフォードがエメリアたちを連れ戻したこと。父にとってもそれは予想外だったはずだ。
 
(それにしても、王宮に戻ってから今まで会わなかったのが不思議だわ。……いえ)

 そう思って考え直す。
 彼のことだから、ギルフォードの出方を見定めていたのだろう。そして『父』として接しても問題ないと判断して声をかけた。

 出世欲が強く、自分以外は駒としてしか見ておらず、誰も信用していない。その心をにこにこと笑う仮面の下に隠している。
 エヴァン公爵はそんな人物だ。

「心配していたのだぞ、陛下が探してくださったからよかったようなものを……」

 大きくため息をついた父は、次いで満足そうに顎髭を撫でた。

「……まぁ、おかげで皇帝の執着を引き出せたか。お前もなかなかの策士だな」
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