【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
ピクリと手が動くが、エメリアは努めて笑顔を続けた。父と同じように。
「お話はそれだけかしら。忙しいので失礼します」
今さら彼と話すことはない。踵を返したところで、声が飛んできた。
「たかが妖精の愛し子を産んだだけで満足しているわけではあるまいな。子どもなぞいつ死ぬかわからん。早く皇帝の情けを受けて、あと三人は子を産むのだぞ。男子ならなおいい」
その瞬間、エメリアは立ち止まった。
振り返って父の顔を冷ややかに見る。
「……――今、なんと?」
ピンと空気が張り詰める。
父が眉を下げた。
「なにか気に障ったかい」
「フレンはすでに皇太子の座にいます。その上で子をなせというのはどういう意味でしょう?」
「おいおい、育ててやった恩を忘れて、親に口答えするつもりではないだろうな」
「王妃になった時点で、その恩はお返ししたはずです」
夫に望まれない花嫁となったときに。
彼は国母の父の称号を得た。それ以上何が必要なのか。
「私もフレンも、これ以上お父様の政治の道具になるつもりはありません」
エメリアは背筋を伸ばして、父をまっすぐに見た。
この不遜で、己以外の人間を道具としか見ていない彼が、愛する娘を侮辱した。――それだけは、許してはいけない。
「……いえ、離縁状をいただいている以上、親子でもないでしょう。皇族への無礼な言動、この場でしかるべき対処をしてもいいのですよ」
「――」
にこにこと笑っていたはずの父の表情がなくなる。
折檻される前の特徴だ。エメリアは途端に震えそうになる身体をその場に留めた。
「……っこの、馬鹿娘。いちから教育し直してやる!」
杖を持ち上げられる。予定通りだ。
(暴力沙汰を理由に、王宮から追い出してやる!)
やがてくる痛みを覚悟して身を硬くする。
そこで黒い影が二つ、間に入った。
「お話はそれだけかしら。忙しいので失礼します」
今さら彼と話すことはない。踵を返したところで、声が飛んできた。
「たかが妖精の愛し子を産んだだけで満足しているわけではあるまいな。子どもなぞいつ死ぬかわからん。早く皇帝の情けを受けて、あと三人は子を産むのだぞ。男子ならなおいい」
その瞬間、エメリアは立ち止まった。
振り返って父の顔を冷ややかに見る。
「……――今、なんと?」
ピンと空気が張り詰める。
父が眉を下げた。
「なにか気に障ったかい」
「フレンはすでに皇太子の座にいます。その上で子をなせというのはどういう意味でしょう?」
「おいおい、育ててやった恩を忘れて、親に口答えするつもりではないだろうな」
「王妃になった時点で、その恩はお返ししたはずです」
夫に望まれない花嫁となったときに。
彼は国母の父の称号を得た。それ以上何が必要なのか。
「私もフレンも、これ以上お父様の政治の道具になるつもりはありません」
エメリアは背筋を伸ばして、父をまっすぐに見た。
この不遜で、己以外の人間を道具としか見ていない彼が、愛する娘を侮辱した。――それだけは、許してはいけない。
「……いえ、離縁状をいただいている以上、親子でもないでしょう。皇族への無礼な言動、この場でしかるべき対処をしてもいいのですよ」
「――」
にこにこと笑っていたはずの父の表情がなくなる。
折檻される前の特徴だ。エメリアは途端に震えそうになる身体をその場に留めた。
「……っこの、馬鹿娘。いちから教育し直してやる!」
杖を持ち上げられる。予定通りだ。
(暴力沙汰を理由に、王宮から追い出してやる!)
やがてくる痛みを覚悟して身を硬くする。
そこで黒い影が二つ、間に入った。