【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
「……ん、ごほっ」

 自分の考えが急に気恥ずかしく、ギルフォードは咳払いをした。

「陛下? や、やはり、お耳に入れるのもバカバカしい話でしたでしょうか」

 外交官の言葉に我に返る。
 深く思考していたのを、怒っていると勘違いしたらしい。

「すぐにお断りの返事を」
「いや、少し検討しよう」

(なにより、エメリアの意見を聞きたい)

 そう自然に思った自分に驚く。

 エメリアの姿を探して、廊下を歩いていると男女の声が聞こえてきた。

 声だけで誰が話しているのかわかる。
 エメリアとその父のエヴァン公爵だ。背筋を伸ばしたエメリアが父親と対峙していた。

「私もフレンも、これ以上お父様の政治の道具になるつもりはありません。……いえ、離縁状をいただいている以上、親子でもないでしょう。皇族への無礼な言動、この場でしかるべき対処をしてもいいのですよ」

 そうエメリアが宣言した途端、公爵が持っていた杖を振り上げた。
 黒く光るそれはかなり硬い材質でできているのが伝わってくる。

「……っこの、馬鹿娘。いちから教育し直してやる!」

 咄嗟にギルフォードは駆け寄り、二人の間に入る。次いで小さな黒い影が、公爵の持っている杖にぶつかった。

 次の瞬間、腕に鈍い痛みが走った。
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